【MUKASA-HUB 法人会員連載Vol.1インタビューコラム 九州旅客鉄道株式会社 宮崎総合鉄道事業部部長 宮野原佳】

 

JR南宮崎駅の隣に、JR九州の鉄道事業部があることを知っている県民は、意外と少ない。駐車場に入り線路沿いの道を抜けると、新しく飫肥杉のあしらわれたエントランスが見えてくる。宮崎市と日南市を結ぶ観光列車、特急「海幸山幸」にも使用されている素材だ。階段を登り事務所をノックすると、宮野原さんが出迎えてくれた。ニコニコとチャーミングな笑顔が印象的だ。「フランクな感じで大丈夫ですよ」という宮野原さんのお言葉に甘えて、話題のカープ油津駅や今後の事業展開などのお話を伺った。

 

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—現在注力されている事業を教えてください。

 毎年この時季に取り組んでいるのが、プロ野球キャンプにあわせた鉄道の利用促進です。カープ油津駅というのも一つの事例ですが、日南線沿いだけでも3球団(カープジャイアンツ・ライオンズ)が来てくださっています。さらにホークス・オリックスと5球団の一軍がキャンプ地として毎年宮崎に来るんだから、かなりの強みですよね。JRもキャンプシーズンを盛り上げるお手伝いをと、2月はキャンペーンを開催しています。

—どういったキャンペーンですか?

2月はインスタグラムで「JR で宮崎キャンプに行こう!」 というキャンペーンを実施しています。宮崎駅コンコースに5球団選手のパネルとユニフォームを置いて、キャンプを紹介する特設コーナーを作っています。そこで写真を撮って、もう1枚キャンプ地の最寄駅での写真を一緒に投稿します。その際に「#(ハッシュタグ)JRで宮崎キャンプ」というハッシュタグをつけてもらえれば、抽選で20名に素敵なプレゼントを、というキャンペーンです。プレゼントは球団グッズや宮崎の特産品を用意しています。インスタグラムを使ってのキャンペーンは初めてなので、僕たちもどういう展開になるか、楽しみにしています。

 

カープを応援している日南の人たち”を応援したい

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カープ油津駅の取り組みについて教えてください。

カープ油津駅は2/4に誕生したのですが、これも前代未聞のプロジェクトで。

日南市天福球場カープのキャンプ地ですが、油津駅から歩いて5分くらいで行けるんです。今キャンプに来ている5球団の中で一番JRからアクセスがいいのがこのカープなんですよ。それなのに鉄道で行く人が少ない。やはりみなさん車で行かれるんですよね。2、3年前までは油津商店街まで行く人すらいなかった。キャンプに来られる方の多くは、車で来て駐車場からシャトルバスで天福球場まで行くのですが、キャンプ見学されたらまたバス・車でまっすぐ帰られる。街ナカに人が流れてこないというのも一つの課題でした。

去年は日南市がカープ一本道というのを作って、油津商店街と天福球場を一本の真っ赤な道で繋ぎました。その道のおかげで、天福球場からずいぶん商店街へ人が流れるようになった。それをヒントに今回、駅も赤く塗ればファンの方の聖地化するんじゃないかと。だって赤い駅ってまずないでしょ(笑)。さらに球団名を冠につける駅ももちろんないので。

前例のないことをするには、もちろんたくさんハードルがありました。ですが、1ヶ月弱の期間のキャンプのために、油津の方たちはカープ一本道を作った。油津はそうやってカープを365日応援しているし、まちづくりにも活かそうとしている。ですから、JR九州が“カープ”を応援するということではなく、“カープを応援している日南の人たち”を応援したい。そんな思いでこのプロジェクトを地域の人たちと一緒に取り組ませていただきました。油津の方たちはこの話をとても喜んでくれて、一緒になって盛り上げていただきました。地域が元気でないとJRも元気にならない。こうした取り組みで、少しでも地域が活性化して、JRをご利用いただけるようになればと思っています。

 

鉄道での”非日常”を演出する

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 —MUKASA-HUBを今後どう活用されていきたいか、お教えください。

 

MUKASA-HUBには若い方を中心に今もたくさんの方に来ていただいていますよね。あれだけの小学校を活用したコワーキングということで非常に話題性もある。MUKASA-HUBのことは、いろんな方が集まって新しいエネルギーもまた生まれて来るような、そういう場所に育っていって欲しいなという気持ちで応援しています。JR九州はやはり地域を応援していきたいですし、地域と一緒になって取り組んでいくということが大事だと僕は思っています。自分たちだけでやれることにはやっぱり限界がね…地域の人たちや、いろんなアイデアを持っている人たちと一緒になって協働していく。それが大事だと思うんですよ。いろんな事業をされる方と、広がりを持った取り組みをすることで、みんなで潤っていく。今はそういう社会じゃないかなと思っています。やはりそういう意味では村岡さんが一平という枠をある意味取り払って、色々な活動をされているのは非常に尊敬しているし、ぜひ応援したい。そこからいろんな事業や繋がりが生まれていく。いろんな話がそこからたくさん出てきて、宮崎が元気になっていけば嬉しいです。これからいろんなお仕事が一緒にできたらいいなと期待しています。

 

—地域貢献、地域創生についてのお考えがあればお教えください。

キャンプは2月で終わってしまいますが、僕たちはいろんな方法で鉄道の利用者を増やしていきたい。普段からお客様に乗っていただけるようにもっと勉強していかなくてはならないと思っています。宮崎は車の保有率が九州でも一番高い。それくらいもともと鉄道に乗る機会が少ない地域なので、日常的にお使いいただけるようにするためにも、まず鉄道の旅の楽しさを知っていただきたいと思います。鉄道の非日常の使い方を演出していくしかないのかなと。例えばワインや焼酎といったお酒を楽しむイベント列車とか。

それから現在、宮崎駅西口の開発を進めています。具体的な開発内容は検討中ですが、宮崎の街にとって一番いいものができるように考えていかなければと思っています。駅ビルだけで潤うということではなく、街ナカとの協働が必要です。宮崎駅のちょうど正面に、高千穂通りという大きな通りがあります。その横にも広島通りという1本の通りがあって。この2本の通りと、橘通りを結ぶエリアで一帯となって盛り上がっていけないかなと。商店街で言えばあーみーろーどがあって、広島があって若草通り、そして一番街となってるでしょ。商店街と僕たちがつくる駅ビルは、これから一緒にまちづくりをしていけるのではないかと、期待しています。僕たちはまちづくりの会社です。単純にビルを作るだけではなく、地域の皆さんと手を携えて、アイデアを出し合いながら、そこに”まち”をつくっていきたいです。

 

ー新しいまち、楽しみにしています。ありがとうございました。 

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 photo by ワタナベカズヒコ

written by 倉本亜里沙