【MUKASA-HUB 法人会員連載Vol.3インタビューコラム スパークジャパン株式会社 代表取締役社長 岡田 憲明氏】

「宮崎をアジアのシリコンバレーに」と語る岡田さんの目には確信の色以外見えない。

話を聞くうちにだんだんと、その言葉の意味が理解できる。 

相手の目線に合わせ、根気強く会話をするその姿勢は、 

ITやWEB業界に身を置く人の、顧客に対し真摯に向き合う姿勢を感じさせる。

企業のあり方という視点から、これからの宮崎について、お話を伺った。

  

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—貴社の概要をお願いします。 

 

 主に中小企業が、顧客を増やす・固定費を下げるなど、安定した企業活動をするためのご支援をさせて頂いています。具体的にはマーケティングシステム開発、顧客管理のクラウド活用 、ネットワークインフラ、Wi-Fiやサーバー・データセンターの管理などです。

 

—現在力を入れていることを教えてください。 

 

 現代社会において、人口減少は大きな課題です。当然働く人が減り、買う人も減る。もう一つは、購買者のニーズが多様化していること。昔だったらハタチになったら車を買ったり、お酒を飲むようになって。それから30歳になったら家を買う、とか。とてもシンプルでした。しかし現在ではハタチになったからってお酒を飲もう!という感じでもないし、家にしても買うものでなく借りるものだ、というタイプの人も増えています。そういった消費者ニーズが多様化しているというのも社会現象の一つだと思います。この問題を企業はよく考えて、様々なアプローチをしていかなくてはならない。買う人が減っていく、売る人も集まらないというところが課題ですね。既にある商品を軸にして、個人に合わせてアレンジした商材を作っていくということが大事です。

では宮崎ではどうかというと、いいものを作っていても、マーケットが小規模で終わっている企業もたくさんあるんです。そこで、陸の孤島であるということを逆手にとってみる。来にくいからこそ、県外に宮崎の商品を売っていく、その仕組みを作るお手伝いができないかと取り組んでいるところです。

 

お客様と共に歩み、成長する企業に

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—ニーズの多様化という課題に対して取り組まれていることがあれば、教えてください。

 

 顧客がなぜその商品を買いたいと思うに至ったのか、それぞれの背景をしっかりとリサーチすることです。家族構成や、金銭的価値観だったり、顧客の情報はたくさんあります。そういうものを売る側として、まだ研究しつくせていない気がしますね。私たちの企業も初めはそうだった。ではそこからどうしたかというと、顧客とのやりとりや情報を徹底的に集めて、管理するようにしました。お客様からどういった連絡があって、それに対してどんな対策をしたかということを全て記録しているので、営業や管理部など部署を問わず、一貫した対応サポートができるようになりました。そうすることで、お客様にも安心してご相談いただけるようになったかと思います。

こういった考え方を企業にお伝えしていくことに、今は一番力を入れています。

 

 またもう一つの課題として挙げるならば、人材確保・育成などです。エンジニア・マーケティング・管理職に関わらず、人を巻き込みながら新しいことに挑戦していく、そういった人を育てていきたいのですが、 直近の課題としては現在働いてくれているスタッフに、その能力を持って欲しいというところですね。 そのために人が育つための仕組みを作ろうとしています。入社して3ヶ月くらいは仕事はせず勉強をしてもらっています。

来年に向けて試験を受けてくれる人たちが20名近くいるので、ペーパーテストや適性検査、小論文、集団面接、それから2次面接も行ないます。 

インターンシップに来てもらって、会社の雰囲気や業務内容を見て頂き、興味を持ってくれた方に試験を受けて頂く流れです。

 

−最近の学生さんはしっかりしていますよね。

 

そうですね、ただそういった方たちはやはり県外に流れていってしまう気がします。大学生の県内就職率40%、でも高卒の県内就職率は60%なんですよ。40%と聞くと多いように感じますが、そもそも母数が少ない。 

宮崎大学公立大学南九州大学南九州短期大学社会保険福祉大学、宮崎産業経営大学、看護大学。看護大学からの県内就職率が高いように思います。 看護師だから、研修先にそのまま就職する流れですよね。保育士とかを育てている宮崎学園短期大学南九州短期大学も県内就職率が高い。 その分を引き算していくと、残って欲しい分野の才能やスキルを持った人材がどれだけ残ってくれているかということです。最終的には20%程度にとどまるのではないかと思います。 

 

情報の量で言えばやはり東京の方が多いです。ですから、宮崎の企業に勤めながら東京に行ける仕組みを作りたくて。 2、3年は東京で勉強する、そして宮崎に帰る。キャリアを形成する過程でも、東京の中間層と知り合い刺激をもらいながら働けるよう、柔軟に対応ができるといいと考えています。

県内の学生さんが県内で就職したいと思うような仕組みを作りたくて。だから私たちも大学生のインターンシップを積極的に採用している。

 

発展に必要な要素はやはり教育機関なんですよ。 

そういう意味では大学が企業ときちんとタイアップをして、企業も共に学生を育て、そこからちゃんと地元の企業に入る、そして地元の会社はその人材と一緒に新しいサービスを作って県外に売り出して外貨を稼ぐ。という循環を作りたいなと。

 

 

未来を担う人材と、新しいマーケットを開拓していく

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僕が目指しているのはやはりアメリカのシリコンバレーです。

そこに本社のある会社というとYahoo!GoogleAppleintelTwitterFacebookなど大手の企業はほとんどそこにあります。でも皆さんのイメージのようにビルが立ち並んでいるわけではないんですよ。 海と山があって、車がないと生活できない。そう考えたら、何もこの宮崎で、同じような会社を作れないとは思えない。 

 

そういった観点から言うとMUKASA-HUBはすごく適していて、車さえあれば、行きたい時に行って同じ思いを持った仲間が集って、そこでディスカッションしながら新しいサービスやアイディアが生まれていく。そういったものを僕らIT業界の人間は期待しているし、次のFacebookGoogleのようなITサービスが宮崎から誕生するためには、MUKASA-HUBのようなところでいろんな人たちがいろんな角度からディスカッションを重ねることが必要だと思います。 

 

—MUKASA-HUBをそういった施設にしていくために、どうしたらいいでしょうか?

 

やはりコンテンツの拡充が必須かと思います。 あそこに行けばこういう機会があるとか、最初は簡単なことでいいと思うんですよね。そして最終的にはやはりコミュニティが生まれていくことが大事だと思います。 

そのために、就職を控えている大学生と、企業との接地面として、MUKASA-HUBがあるというのも面白いですね。 学校の中に会社を持つことはできないけど、たまに出前授業みたいなことはできる。そして会社の中に学生さんがくるっていうのはインターンシップとか会社説明会しかないんですよ。  

学生のビジネスコンテストや企業向けセミナーに、場所を提供したりということをどんどんやられるといいのかなと思います。その流れでビジネスが生まれたりして、じゃああそこに週1集まろっか みたいな人たちも出てくるかもしれない。

大きなイベントをやるのではなくて、小さなイベントを継続していくことが大事なのかなと。九州パンケーキがここに至るまでの経緯みたいなものを村岡さんと一緒に話してもらう、みたいなイベントとかはできますよね。  そのイベントにどんな人たちが来るのかということを想定してやらないと。単に一回くる人たちを集めようというのではなくてどういう人たちが来るかな?ということを考えて、先に繋げていくことが大事だと思います。

 

—学生さんから育てようと思われている、理由をお伺いしてもいいですか?

 

宮崎の人口が減っていますが、出生率自体は低くはない。 それでもすごいスピードで人口が減っているのは若者が出て行っているからです。18歳までは宮崎で育っても、大学でかなりの数の若者が出て行ってしまう。 大学で県外から入って来ても、その人たちもまた卒業とともに県外へ戻ってしまいます。結局18歳から22歳の間でかなりの人口が流出してしまう。

そして一度県外で就職してまうと、よほどの理由がない限り戻ってこない。 

まず人口を減らさないこと、人口が1人でも増える方法を考えないといけない。 

となると給料を払わなくてはいけないので仕事を作らなくてはいけない。 でも宮崎にはない、そうすると外貨を稼ぐ、東京のマーケットからお金を持って来る。 

というような仕組みが必要で、じゃあそれを病院ができるかというとそれはできない。 北海道から病院には来ないじゃないですか。だから医療という仕事には限界がある、それはもちろん髪を切る仕事なんかにしても同じことが言える。 しかしモノ作りをしてそれを外に売るという仕事は、マーケットがある限りこちらで量を作ることができれば、どんどん売れるじゃないですか。今県内で10個売れていたところが県外までマーケットを広げれば、1,000個売れるかもしれない。 

現地の仕事ではできないこと、県外のマーケットから外貨を稼ぐというところで、ITの仕事は、スタッフがいればいくらでも受けられる、 それで人口を増やしたいなと思っていて。僕らの会社だけではなくて 一気に業界に関わる人口を3万人くらいにしたいんです。だからみんなやろうよって言って他の会社の人たちに声かけをしてもちろん僕ら経由の仕事だけじゃなくって、それぞれの会社が東京というマーケットを相手に、みんなで仕事をドッカンと持って来られれば、この業界全体の存在価値を高められます。“なんかITの仕事って面白そうよね”学生さんにも“なんか大人が面白そうにしてるな、この業界に入ってみたいな”と思うようになるといいな、と。

 

—では最後に、WEB、IT業界を志している学生さんに一言お願いします。 

 

WEB、ITの可能性は無限大です。面白いですよってことぐらいですかね(笑)。 

今の時代、何をするにしても、必ずネットで下調べをするでしょう。 ITに関わっていない人なんて、ほぼ存在しないんです。 

そのサービスを提供する側の人になってみませんか?ということが伝えたいですね。 プログラミングやりたいとか、デザインが、という小さな話ではなく。 世の中の仕組みが再構築されているこの時代に、そこに携わるのって面白いですよって、伝えたいです。

 

—ありがとうございました。

 

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Photo by ワタナベカズヒコ

Written by 倉本亜里沙